感想 ふしぎの海のナディア 上

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経緯

 コロナ自粛で出かける場所もなく暇だったのだが、「ふしぎの海のナディア」がアマゾンプライムで無料になっていたので観ることにした。ナディアは「エヴァンゲリオン」などで知られる庵野秀明氏が総監督をしており、ヴェルヌの「海底2万マイル」に着想を得たものである。まず1/3にあたる1クール分(13話)を観たので、この時点での感想を残しておこうと思う。全て観終わってから見返したら、また新しい発見があるかもしれない。

○あらすじ

 19世紀末、科学の発展に人々は沸き、新しい世の中への期待感が高まりつつあった。その陰で世界各地の海に謎の海獣が出現し、船舶を襲っているという噂が流れていた。
 発明好きの少年ジャンは飛行機の発明コンテストに出場するためにパリの万博会場へ来ていた。そこで謎の宝石「ブルーウォーター」を持つ少女ナディアと出会う。ジャンはグランディスに追われる彼女をかばい、旅に出ることになる。
 紆余曲折あり、遭難したジャンたちはアメリカの戦艦に拾われる。彼らは例の「海獣」を退治するためにはるばる大西洋を渡ってきたのだ。そこに2匹の「海獣」が現れる。水兵たちは勇敢に戦ったが、正体不明の「海獣」の攻撃を受けて戦艦は大破してしまう。
 再び海に投げ出されるジャンたち。舵の壊れた戦艦に彼らを助ける余力はなく、途方に暮れるばかりであった。そこへ「怪物」の巨大な魚影が近づいてくる。万事休すと思われたが、その正体は巨大な潜水艦「ノーチラス号」であった―。

○感想

 私は冒険小説や冒険映画が昔から好きで、当然「海底2万マイル」も読んでいたが、このタイトルはそこまで好きではなかった。登場するメカのアイデアや「怪物」の正体が潜水艦であるというトリックも興味深かったが、謎めいた人物ネモ船長とその志にはいまいちイメージがつかめず物語に入り込むことができなかった。これに比べると「十五少年漂流記」(同じヴェルヌの少年向け冒険小説)の方がドラマチックで少年たちの心情もよく理解できるので好きだった。無論、最初に読んだ当時の私(小学校高学年頃だったか)は幼かったので評価が偏った側面もあるだろう。しかし、本作ではジャンとナディアという純真な少年少女、そしてコミカルなグランディスら3人組の登場によって格段にメリハリが生まれたように思う。

 ジャンとナディアは年少ゆえの未熟さで感情的になってお互いを傷つけるような言動をしてしまうこともある。しかし、自身の行いに反省し、「ごめんなさい」「気にしてないよ」と謝ることができる誠実さを持っている。年を取ると円熟してそういったトラブルを未然に回避するテクニックを身につける一方で、つまらない保身にとらわれて本心から謝るということができなくなっていくような気がする。本来は子どもの視聴者に向けた教訓的なエピソードだと思うのだが、大人の立場から見てもそれはそれで自らを顧みる部分があった

 「ブルーウォーター」と「ノーチラス号」の秘密、謎に包まれた「ニューアトランティス」の目的などミステリーに満ちた展開は一見「エヴァ」のそれに似ている気もするが、主人公たちが向かっていく方向性が全く異なる。シンジは運命という災害に巻き込まれてもがく方なのだが、ジャンたちは謎を解き明かすために自ら運命の渦に飛び込んでいく点が大きく異なる。まあ「エヴァ」の場合はシンジの内面の探求がメインテーマなので謎を解き明かさないのも当然だが、「ナディア」ではあくまで冒険が中心なのだという印象を受けた。
 とはいえ、グランディスらの理解ある大人の存在は無視できないであろう。彼らとは序盤こそ対立するが、とある一件以降は協力関係になる。仲間を思いやる姿勢や元は敵だったジャンたちを尊重する懐の大きさは、信頼し尊敬できる大人の姿を示していたと思う。「エヴァ」では子どもみたいな大人しか出てこなかったなあ・・・。信頼し、支えてくれる人たちがいるからこそ勇気をもって前に進んでいけるものだよな。

○今後の展開について

 ネモ船長とガーゴイルの対決がメインになると思うのだが、そこへジャンたちがどう関わっていくのかが見物。一応マリイの両親の仇という動機はあるがまだ弱いのでもう1つ2つは仕掛けが出てくるだろう。また、ネモ船長はナディアの出自について知っていながら隠していることがありそうだ。なぜ話さないのか?なぜナディアに対して冷たくあたるのか?ということも気になるところである。

続き↓

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