感想 ふしぎの海のナディア 下

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前回に引き続き、「ふしぎの海のナディア」27~39話を観たので感想を書いておく。

前回(14~26話)

ohmisanyon.hatenablog.com

○あらすじ

ノーチラス号との別れをつげたジャンとナディアたち。無人島での束の間の平穏を楽しむ一行だったが、彼らが上陸した「流れ島」はなんと古代アトランティス人によって作られた船だった。謎の声に導かれたナディアは自分が大昔宇宙からやってきた宇宙人の末裔だと知り、ショックを受ける。そして故郷タルテトスへたどり着いたナディアは、自分が純粋な地球人でなく、世界を滅ぼす危険な力を持たねばならない運命に絶望するが、ジャンやグランディスらの愛情を知って安堵の涙を流す。

しかし、ガーゴイルの空中戦艦が襲来して、ナディアは攫われてしまう。ナディアが身代わりになればジャンたちの命は助けるという約束だったが、ガーゴイルは約束を反故にして殺そうとする。絶体絶命と思われたその時、Nノーチラス号が助けに駆けつける。再び集結した一行はナディア救出のため、反撃へと出るのであった。

 

○感想

24話から始まる無人島編は非常に評判が悪いのだが、確かにそうだろうなと思った。大雑把に言うとジャンとナディアが喧嘩したり、仲直りしたりのドラマを描くパートなのだが、本筋と関係ない話が続く上に無人島から出ないので毎話同じ話を見せられているような気分になる。特に登場人物がキャラソンを歌いながら過去回想を流すだけのエピソードがあるのだが、本当に何も進んでいないので尺稼ぎに思われても仕方ないと思う。おそらく、直前の23話までと、終盤37話~39話の作画コストが非常に高く、制作が追いついていなかったのではないか。それは仕方ないし、終盤は素晴らしい作画を披露し、風呂敷をキッチリ畳みきったので許せるエヴァンゲリオンで結末ぶん投げてきたのを見せられてきた身としてはよくまとめたと評価したい。

Nノーチラスといいメカデザインが非常によく、戦闘シーンの作画もいい。潜水艦ノーチラス号のデザインを踏襲しながら飛行戦艦として違和感ないデザインに昇華、戦闘をズルズルやらずに熱いクライマックスを簡潔に描き切った。
1話から自らの出自に対して負い目を感じ続けてきたナディアが、残酷な真実を知って絶望し、兄と父を喪いながらも最後には自分の運命を肯定して、周りの人々に支えられて地球に帰る一貫した物語だったと思う。

宿敵ガーゴイルは「人類は争いばかりしてお互いを傷つける愚か者。圧倒的な力を持つ誰かが統治してやらなければ、お互いを滅ぼし、地球までも破壊してしまう」と主張していた。彼が信奉する古代アトランティス人も同族の利害対立で滅ぼし合ったので、実際はアトランティス人も地球人も大して変わらない同類なのだが、彼は最後までそれを認められなかった(あるいは本当に気づかなかったのだろうか)。ナディアやネモはそれでも人類の持つ可能性を信じたいと答えるのだが、ご存知のとおり人類はその後2度の世界大戦を起こして傷つけあうガーゴイルの主張もあながち的外れではなかったのだ。争いをくだらないとわかりつつも、止められない人間の愚かさを強烈に皮肉ったエンディングと言えよう。(本編では世界大戦に一切言及せずに幸せなエンディングだけ描いて終わるので僕の行間読みですけどね)

○終わりに

全39話と少し長いですけども、自然科学や冒険活劇が好きな人は気に入ると思います。
極端な描写もないので人に勧めやすい部類です。ストーリー・デザイン・音楽のレベルが高く、単なる子どもだましではなく、子どもにもわかるような形でしっかりとしたメッセージを書いている作品です。

今回もありがとうございました。またよろしくお願いします。