アニメ『メイドインアビス』を観た話

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アニメ『メイドインアビス』1~13話および『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』を観たので感想を書くことにした。

 

観ようと思ったきっかけ

メイドインアビス』は2017年のアニメだったが、当時は特に関心がなかったので視聴していなかった。というのも、キャラクターデザインを見て、日常系アニメの一種だと決めつけていたからである。個人的な嗜好の話で当該作品ファンの方には申し訳ないのだが、ごちうさ(2014)やきんモザ(2013)などは馬が合わなくて、少々うんざりしていたのである。そういう背景があり、特に関心が起きずにスルーした。

そして時が流れて2020年1月になって『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開された。するとTwitterのタイムラインで大騒ぎされるようになり、少し興味が出てきた。暗黒を感じさせる怪文書が瀑布のごとく流れてくる。ここでようやく「自分が思っていたメイドインアビスの認識(日常系アニメ)は間違っているらしいぞ」と気づく。

ならば確かめねばなるまい。その真相を確かめるべく、私はアマゾンの奥地(Amazon Prime Video)へと向かった。

 

アニメ『メイドインアビス』1~13話の感想

メイドインアビスのストーリーは主人公リコが伝説的探窟家である母の後を追って「アビス」という地底世界の底を目指す。リコが出会った機械人形のレグもまた、失った記憶を取り戻すため、自らが何者なのかという謎を解き明かすためにアビスの底を目指すというものである。

メイドインアビスで好きだなあと思ったのは、一貫して人は自然(アビス)に勝てないという描き方をしていること。人は絶対に征服することのできない自然を相手に知恵を絞って、なんとか「やりすごす」。倒すのではなくて、先に進むために、生きのびる方法を探す。その自然の脅威が神秘性を帯び、畏怖に繋がってくる。もし、自然がやすやすと倒されるような存在ならばそんな感情にはならない。アビスという正体不明の大いなる存在を描きだすことに成功していると思う。

「白笛」と呼ばれる指折りの実力者はその自然すら屈服せしめてしまうほどの強さを誇るわけだが、自然の恐ろしさを描きだしたからこそ、その驚異的な力が際立って異彩を放つ。

しかし、その白笛すらもアビスに畏敬の念を覚えている。「アビスは全てを与えるといいます。生きて死ぬ、呪いと祝福の全てを。」というのはこの世界を表す象徴的なワード。おそらくライザも、リコも、ボンドルドも、アビスという存在に溺れている。この世界ではいかなる実力者であろうと皆一様にアビスに魅せられているのである。

 

好きな描写

シギーやナットがリコとレグを送り出すところ。ぶっちゃけた話、彼らは主人公サイドの冒険が始まったら出てこない。極端にいえば描写しなくても本筋には支障のない存在である。だが、出立する友人の姿を見て、素直になれないナットの心の機微を描いていたのは良かった。シギーはリコを引き留めなかったが、それは彼がリコを理解していて、引き留められないことがわかっていたからだ。それならば自分にできる力添えをして友人を送り出すことにした。

かけがえのない友人を残して旅立つからこそ、「二度と帰れぬ旅」であることが辛くなってくる。しかし、冒険への憧れは何者にも阻むことはできないのだ。

 

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明の感想

胸がざわざわする映画、というのが真っ先に感じた感想だった。自分の意思とは無関係に、胸の内から頭の芯に向かって何か得体の知れないモノが立ち上ってきているのではないかというような。ざわざわとした気持ちを味わった。

公開中の映画なので本編詳細のコメントはしないが、内容はアニメ13話の直接の続きである。外伝などではなく、本筋の続編なのでアニメ1~13話視聴の上で劇場へ足を運ばれますよう。

はっきり言って、見ている最中は苦しかった。とても辛かった。でも終わってしばらく経てば嫌悪とは違う感情になっていた。

私が思うに苦しさとは乗り越える喜びとセットなのだ。乗り越えた後に振り返ってみると、あんなに辛かったはずなのに不思議と愛おしく感じる瞬間がある。そういう意味では、観客も共に冒険していたし苦難と戦っていたのだろう。

今振り返ると、こんな険しい道を通って来たのだと、どこか懐かしく、そして愛おしく思う。これが、愛なのかもしれない

彼らの前途多難な冒険の先を見つめていたいと、そう思ったのだ。